2021/05/14
民事事件と刑事事件の違い
こんにちは。刑事事件の話(豆知識?)ばかり書いていますが,別に刑事事件専門というわけではありません。
弁護士になる前に検事をしていたことがありましたので,刑事事件について詳しいというだけで,もちろん民事事件も両方手がけております。
ところで,民事事件と刑事事件とは何のことなのか,そこから少し書いてみたいと思います。
市民相談(市役所相談)などで時折尋ねられることがあります。
まず,民事事件とは,個人(企業を含む)間のトラブルを解決するための事件です。
国に対して何かを請求する場合,国家賠償訴訟や行政訴訟を起こすことになりますが,大きく括るとこれも民事事件の範疇です。
一方,刑事事件は,国が個人に対して,刑罰を科すための手続をする事件です。
必ず攻撃側は国,防御側が個人になります。
では具体例を挙げてみましょう。
AさんがBさんにうまいこと言われてお金を騙し取られました。
その結果・・・
・AさんはBさんに対して騙し取ったお金を返すよう求めました。
→BさんがAさんからお金を騙し取ったことは不法行為(民法709条)であり,BさんはAさんに対して,Aさんが受けた損害を賠償する義務があります。
つまり,この点では,AさんとBさんとのトラブルを解決する手続ですから「民事事件」です。
・Bさんは警察に逮捕され,検察官に起訴されて裁判を受け,懲役刑の判決を受けました。
→Bさんは,検察官(国)から,Aさんからお金を騙し取った行為(詐欺罪(刑法246条)の責任を問われて起訴され,裁判で裁判所(国)から懲役刑という「刑罰」を受けました。
つまり,この点では,国が個人に対して刑罰を科すための手続ですから「刑事事件」です。
このように,特に刑事事件で被害者がいる場合,民事事件の要素も出てきます。
なお,「被害者」がいない刑事事件もあります(例えば薬物,事故を起こしていない交通違反など)。
刑事事件において被害者と「示談」することは「民事事件の解決」ですから,刑事事件とは直結しません。
ただし,被害者がいる事件では「被害者が加害者のことをどう考えているか」,また「被害回復(弁償)」がされているか,といった要素は,検察官・裁判官(国)が処分や処罰を決めるにあたって重視されます。
だから,「示談」することは,刑事事件の面においても処分や処罰に影響を与えることになるから重要,ということになるわけです。
一方,示談せずに刑事事件が終わったとしても,民事事件としては何も解決していないわけですから,後日,被害者から請求を受けたり,民事裁判を起こされたりすることもあるわけです。
逆に,例えば単に貸したお金をなかなか返してくれない,などですと,民事事件ですが,そこに犯罪(刑法等「刑罰」が規定されている法律違反)の要素がなければ,刑事事件ではないということになります。
例えば去年あたりから頻発している芸能人の不倫とかですと,不法行為ですので「違法」ではあります(民事事件として弁護士の出番です)が,刃傷沙汰でも起きない限り「犯罪」ではないので警察や検察の出番はないわけです。