2021/06/08
再度の執行猶予とは
続きです。再度の執行猶予について解説します。
再度の執行猶予とは,要するに,執行猶予期間中に犯した罪について,さらに執行猶予をつけるというものです(刑法25条2項)。
条件が色々あります。
①執行猶予に保護観察が付いていない
②執行猶予期間中に言い渡された刑が1年以下の禁錮・懲役である
③情状に特に酌量すべきものがある
の全ての条件を満たす必要があります。
①②はシンプルに条件を満たしているかどうかですね。
ここでは③について解説します。
まず,結論的には「情状に特に酌量すべきものがある」と裁判所が認めてくれることはほぼありません。
特に同種の再犯の場合はまず認められません。
ここで「同種」とは,犯罪は「財産犯」「粗暴犯」「性犯罪」など,大きく分けた分類があり,そのくくりが同一のものです。
刑法上も見出しとして色々分類されていますが,それよりももっと大まかな分類です。
例えば財産犯ですと「窃盗,強盗」だけでなく「詐欺,恐喝,横領」なども財産犯です。
再犯が同一の犯罪やこのくくりで同種の場合,基本的に再度の執行猶予はつかないと考えて良いでしょう。
執行猶予とは,要するに裁判所がくれた最後のチャンスです。
これを最後に二度と犯罪をしないよう立ち直るんだよ,という温情なわけです。
執行猶予中の再犯とは,要するに裁判所的には,チャンスを無駄にして裏切ったということになるわけです。
ましてや同種の再犯をした場合,砕けた言い方をすると「裁判所なめとんのか」となります。
再度の執行猶予を求めるとは,要するに「最後のチャンスを無駄にしたけどもう一回チャンスをください」ということになります。
よほどの事情がない限り,そんな簡単に認めてくれるわけがないよね,ということが分かるかと思います。
同種と比べれば,このくくりで言うところの「異種」の再犯の場合は,まだ多少なりと可能性があります。
たとえば窃盗(財産犯)で執行猶予中に傷害(粗暴犯)で再犯とか。
もっとも,種別が違えどまた故意に(わざと)罪を犯しているので,それでもほとんど再度の執行猶予はつきません。
再犯に至った事情次第ということになります。
一方,執行猶予の原因が交通関係以外で再犯が交通事故のケースは,比較的再度の執行猶予がつきやすいです。
これは,窃盗であれば盗もうと思って盗んでいるなど,基本的に犯罪は故意に(わざと)起こすものであるのに対し,交通事故は,過失(ミス)で起きてしまうものであるからです。
ミスで交通事故を起こしてしまう可能性は車を運転する方なら誰でもありえます。
誠実に事故対応をしていれば,比較的再度の執行猶予がつきやすいと言えます。
ただ,それでもそもそも運転するなよなどと言われがちなので,運転が必要とな事情を説明できないと難しかったりしますが。
ちなみに,再度の執行猶予の場合,必ず保護観察が付きます(刑法25条の2第1項後段)。
なお,当職はそんな再度の執行猶予を獲得したことがありますので,どうかなと思われる方はまずご相談を。