執行猶予について

不貞行為の話が続きましたので,今回は刑事事件について。

「執行猶予」という制度があります。
ニュースや何やらで耳にしたことがあり,要するに刑務所に入らずに済むものという理解をされていると思います。
これを少し具体的に解説します。

「執行猶予」(刑法25条1項)とは,例えば「懲役1年に処する,この裁判が確定した日から3年間刑の執行を猶予する。」というものです。
砕けた言葉で説明しますと,意味としては
①原則として,1年間刑務所に入ってもらいます
②ただし,判決が確定した日から3年のあいだ,大きな問題を起こさなかったら,3年経った時点でなしにしてあげます
というものです。

②について解説します。

まず,執行猶予の起算点(スタート)は,判決の日ではなく,判決が確定した日です。
たとえば6月8日に判決が言い渡された場合,6月8日からスタートではありません。
判決は言い渡した時点では確定しておらず,判決の日を含めて15日間は不服申立(控訴等)ができます。
先の例で言いますと,6月22日までは確定しないわけです(早期に確定させる方法もありますが例外ですので省略します)。
その期間中,被告人も検察官も不服申立をしなかった場合,6月23日に確定しますので,スタートは6月23日から,となります。

次に,雑に「大きな問題」と書きましたが,具体的には,「執行猶予期間中に更に罪を犯して禁錮・懲役の刑に処せられた場合」,執行猶予が「必ず」取り消されます(刑法26条第1号)。
ここもわかりにくいですが,基準としては,禁錮・懲役の判決が確定した時点執行猶予期間中であった場合です。
先の例ですと,3年後の6月22日までに新たな罪の禁錮・懲役刑が確定していた場合に,執行猶予が取り消されます。
例えば3年後の6月20日に罪を犯した場合であれば,判決時点ではまず間違いなく6月23日以降ですので,執行猶予期間は満了しているということになります。

では,その違いはどう現れるのでしょうか。
新たな罪の刑罰が,懲役1年だったとします。
執行猶予が取り消される場合ですと,1回目の懲役1年と2回目の懲役1年が足し算され,合計2年間服役することになります。
一方,執行猶予期間が満了している場合ですと,2回目の懲役1年の1年間のみ服役することになるわけです。

なお,執行猶予期間中に罰金刑の判決を受けた場合も,執行猶予が取り消される「ことがあります」(刑法26条の2第1号)が,このパターンで実際に取り消されることはほぼありません(ほとんど0%です)。



では,執行猶予期間中に懲役刑になるような罪を犯した場合,どうにもならないのでしょうか。
「再度の執行猶予」という制度があります(刑法25条2項)。
ただし,これが適用されることはほとんどありません(当職は獲得したことがありますが)ので,あまり期待しないように,です。
詳しくは次回に。
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